花のたね 三好達治
たまのうてなをきづくとも
けふのうれひをなにとせん
はかなけれどもくれなゐの
はなをたのみてまくたねや
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夢 一尊
春の訪れ
優しき故郷の微笑み
幸せの羽音
ひとひらの花びら
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桜と雲雀 室生犀星雲雀ひねもす
うつらうつらと啼けり
うららかに声は桜にむすびつき
桜すんすん伸びゆけり
桜よ
我がしんじつを感ぜよ
らんまんとそそぐ日光にひろがれ
あたたかく楽しき春の
春の世界にひろがれ |
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わすれなぐさ ヴィルヘルム・アレント
ながれのきしのひともとは、
みそらのいろのみずあさぎ、
なみ、ことごとく、くちづけし
はた、ことごとく、わすれゆく。
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首夏 佐藤春夫
−−−晩春首夏一時に到る感あり−−−
行く春の名残の空を
ほととぎす過りとよもし
背戸の山吹ふぢつつじ
落ち散る水に蛍とび交ふ
*とよもす=なきしきる |
雨上がりの一時穏やかな昼下がり
のんきなかたつむり這い出して… |
明日も雨かな… |
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アルチユール・ランボー 永井荷風訳(珊瑚集)
蒼き夏の夜や
麦の香に酔ひ野草をふみて
子みちを行かば
心はゆめみ、我足さわやかに
わがあらわなる額、
吹く風に浴(ゆあ)みすべ。
われ語らず、われ思はず、
われたゞ限りなき愛
魂の底に湧き出を覚ゆべし。
宿なき人の如く
いや遠くわれは歩まん。
恋人と行く如く心うれしく
「自然」と共にわれは歩まん
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柿もみぢ 佐藤春夫
もみぢ葉の一夜の霜に
なごりなく地にちり敷けば
梢には実のみのこりて
秋ぞらは鋼に似たり
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静夜思 李白
牀前看月光
疑是地上霜
擧頭望山月
低頭思故郷
(訳)
静かなる夜の思い 李白
牀前 月光を看る
疑うらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低(た)れて故郷を思う
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秋 オイゲン・クロアサン 上田敏訳
けふつくづくと眺むれば、
悲 の色口にあり。
たれもつらくはあらたぬを、
なぜに心の悲める。
秋風わたる青木立
葉なみふるひて地にしきぬ。
きみが心のわかき夢
秋の葉となり落ちにけむ。 |
老女 ジョゼフ・キャムベル 佐藤春夫訳
聖(たふと)きところの
白き蝋燭のごとく、
かかるうつくしさは
年経たる顔なり。
冬の太陽の
使い果たしたる日ざしなり、
かくのごときは
旅路を終へし女なり。
血潮は身うちより去り、
その思は静かなること
廃れたす水車が下の
水のごとし。 |
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憂きことの
なほこの上につもりかし
限りある身の力ためさむ
熊沢蕃山
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残りたる雪に交(まじ)れる梅の花、
早くな散りそ、雪は消ぬとも
意味: 残った雪にまじって咲いている梅の花よ、
雪が解けて消えても、ま だ散らないで。
作者:大伴旅人(おおとものたびと)
梅の花、香(か)をかぐはしみ、遠けども、
心もしのに、君をしぞ思ふ
意味: 梅の花の香りの良さに、遠く離れていますけど、
心はいつも、あなたさまのことを思っています。
作者: 市原王(いちはらのおおきみ) |